2015年02月05日 14:46

Majima Hidenori Exhibition

カテゴリ:催事のご案内カテゴリ:Contemporary art
間 島 秀 徳 個 展
Majima Hidenori Exhibition

2015.2.11 (水) ~ 2.17 (火)
10:00~19:00(最終日は16:00閉場)


Majima Hidenori Exhibition

kinesis №607 Sea mount (2014制作) W1115×H195㎝
素材 : 高知麻紙・水・墨・アクリル・顔料・樹脂膠




― Kinesis Colors ―

 
Kinesisの語源はギリシャ語にあり、運動、変化を表わし、生成と死滅の意味を同時に含む。制作のプロセスにおいてもKinesisは、水を媒介として意識と無意識の問を秩序と破壊によって、さらに生成と消滅をくり返す。
震災の前年に発表した8mを越える大作delugeの意味は大洪水であった。常に制作の核になっていた水に再生と浄化の概念をイメージした言葉だが、その後の震災で猛威を奮った恐怖の水は多くの犠牲者を生む現実となった。概念やイメージではなく生と死の現実の問が、すぐそこにあることを突き付けられることになったのだ。
地球が水の惑星である様に、人間にとっても水の存在は欠かすことができない。水と共に生きる(創る)ことこそ未来に繋がる思想であり、
KmesisとColorsが融合することが新たなステージとなって、再び動き始めることになる。
間島秀徳  Majima hidenori 



Majima Hidenori Exhibition

                                            
Kinesis №608 Colors A~F (2014制作) w15×H120㎝
素材 : 高知麻紙・水・墨・アクリル・顔料・樹脂膠




Kinesisという場・永劫の運動   ―2015・間島秀徳

 本展は間島秀徳のまとまった発表としては中京圏では初めての機会となる。間島は既に現代「日本画」の有為の表現者として注目されてきた画家である。
 むろん「日本画」と言っても、いわゆる花鳥風月的な主題がここに見られるわけではないし、また「日本画」特有の様式的な装飾性が強く打ち出されているわけでもない。
 画家は出自こそ東京芸術大学大学院の日本画専攻を出てはいるが、「日本画」公募展には出品してこなかったし、画家も一時は「日本画」としての扱いに拒否感を持っていた。ただし、筆者もいささか関わってきた1980年代以来の「日本画」の表現・研究両面での再考と変化の中で、間島の営為も注目されていったのである。事実、作家は「現代絵画の一断面展」(東京都美術館、1993)をはじめとして、山種美術館員展、VOCA展、日経日本画大貫展、さらには近隣では岡崎市美術博物館での「現代の日本画その冒険者たち」展(2003,筆者企画)など、様々な美術館に展示され、論評されることで、その意識も変化させていったに違いない。
 本展の中心となるであろう比較的大きな ≪ Kinesis ND667 (Seamount) ≫ (2014)に注視したい。和紙に墨、顔料がアクリルとともに駆使され、樹脂膠で定着されている。その点では特別珍しい画材を駆使しているわけでもない。しかしながら最終局面においては、描くことで決定的な形の確定を避ける意味で、筆による直接的な描画を止めている点が他とは異なっているだろう。つまり紙を床に水平に置き、多量の水を撒いた上に墨・アクリル絵異を刷毛で塗布し、充分に水分を含んだ下地を先ず作る。さらにその上に再度、多量の水をたたえた上に、砂や小石を加え物質的なノイズを高めながら、岩絵異、そして岩胡粉を大量に流しているのである。その際に、様々な方向にパネルごと傾け
流すことで、いくつもの筋と溜まりが出来上がってゆく。
 日本画顔料の細かい粒子も、もともと鉱物質であるからには、それは変動してゆく土地の表面の姿が、ここで再度試みられているとも言える。そもそも一つの山とその山の岩山から出た小石が同形反復するように、それは大自然の運動の雛形であるかもしれない。
 ただし、近年、画家はこのような大作においては小下絵を作り、それに基づき直接画面に木炭でアウトラインを描き、全体の構造を作っている。そのせいだろう。今回の落ちかかる様な画面には、北宋の箔寛あたりの巨大な山岳の表現など、ある意味古典的な構造性が透いて見える。しかしSeamountという副題からすると深海の山なのだろうが、存在していても見ることのかなわぬもの、つまりは不可視にして確かに存在しているものの大きなイメージと取るべきであろう。ということは、それは景に見えて、一つのかたちに限定されないものだろう。
 ここでは作家は慎重に大きな構造のみを設定して、制作中は半ばコントロールしつつも偶然に身を委ねているはずだ。水とともに動く現象にさらしつつ、いかに大きな運動の場を作るか、という矛盾するような困難な道筋を画家は、今、辿っている。
 近年の間島はタブローであるにしても円筒形にしたり、屏風形の展開のように、様々な形で、絵画フレームの外部との関係を積極的に図ろうとしている。逆に言えば、他方のタブロー作品ではここに見た≪Seamount≫のように、今一つの運動場を展開しようとしているのであろう。それは絵画としては古典的なまでの構造を意識したものでもある。 ただし、その構造・システムが、世界の全体性とリンクした時、それは外部とつな
がっていく他方の試みと同様に、大きな場として展開するに違いない。
 何かが流れていった跡を残し凝固する。しかし絵画とはただの物質の面では無い。生成し、変化を遂げていく、そのKinesis (運動、変化・ギリシャ語)と名付けられたその連作は、生成変化して止まない生命のうごめき、痕跡から悠久の時間を観想する場でもある。そのような物にして物に非ざる不可解な物がここに存在している。それは石油や(日本画顔料も含めた)鉱物も同様に、永劫に帰ることの無い、留まることの無い大きな「流れ」の一片なのである。
 「日本画」とは、この国の近代的な精神構造と深い意味で切り結んだことばでその表現自体は西洋絵画の形式をベースとしながらも、東洋的な装飾性と工芸的な心性をあわせ持った複雑な折衷画である。現代において「日本画」表現者とは、単純にそのナショナリズムと結び合った範疇の作家という憲昧ではなく、むしろ西洋そのままのモダニズム的な絵画観とも異なり、また内向きの閉鎖的な伝統主義とも異なる、むしろこれからの絵画としての第三の道を、この特異な地点で開放系で考え続けるという意味なのである。
 そのことは、会場で見られる様々に流動し、そして今、固化している多様な物の表情を見、そして全体として画家が仕組んだ構造に身を任せることで体得できるのではないだろうか。その意味では、ここで見る間島作品のエッセンスは、あらためてこの国での表現の可能性を感じることが出来る貴重な機会となるだろう。


天野一夫 
(美術評論家・豊田市美術館チーフキュレーター)









◆ Majima Hidenori Profile
1960    茨城県生まれ
1988    東京芸術大学大学院研修科 修士課程修了
2000~01 文化庁在外研修員としてPennsylvania大学に留学(フィラデルフィア/USA)

主な個展
1988    初個展以降毎年多数開催
       ギャラリーなつか、ギャラリーサージ、ギャラリー閑々居、ギャラリエアンドウ
       タニシマギャラリー、香染美術
2004    kinesis in 六角堂(茨城大学五浦文化研究所・天心邸・茨城)
2006    kinesis:発生(テラタスタジオ・茨城)
2009    kinesis-水の森-小杉放菴とともに/-小杉放菴記念美術館(日光)
2010    間島秀徳-kinesis「deluge」/東京国際フォーラム・エキシビション・スペース
2013    間島秀徳展 requiem/軽井沢ニューアートミュージアム(長野)

◆collection
練馬区立美術館/東京
北海道立釧路芸術館/北海道
デイルメンデレ現代美術館/トルコ
文化庁/東京
岡崎市美術博物館/愛知
茨城大学/日立市郷土博物館/茨城県近代美術館/茨城
東京都現代美術館/東京
小杉放菴記念日光美術館/栃木

従来の日本画技法に捕われず、独自の発想と新しいチャレンジ精神にて新しい日本画の世界を追求され、アートプロジェクトなど多方面でのご活躍や、パブリックコレクション等数多く収蔵あり。


今展では、美術評論家でもある豊田市美術館チーフキュレーターの天野一夫氏に推薦文を頂き(上段参照)、中部地区初の展覧会として開催する運びとなりました。 
間島秀徳の -Kinesis- を どうぞご高覧下さいますようご案内申し上げます。



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